アウディA4 quattroシステム解説
アウディ独自のquattroシステムを解説します。
まずは基本から。
アウディ車のFFと4WDの違い
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■縦置きエンジン フロントオーバーハングに搭載される。その為短ければ短い程良い。初期のquattroでは直列5気筒だったが、いかんせん長すぎ。現在は全長の短い直列4気筒&V型6気筒を搭載。回頭性が向上した。エンジンの振動や反力を効果的に押さえることが出来るので、高級なフィーリングが得られる。 ■クラッチ、フロントデファレンシャルギア クラッチに入ったパワーはフロントデフを素通りし、ミッションへ。 ■トランスミッション ミッションで変速されてデフへUターン。 |
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■縦置きエンジン ■クラッチ、フロントデファレンシャルギア ■トランスミッション 変速されたパワーはセンターデフへ ■センターデファレンシャルギア トルセンデフが内蔵され、トルク配分を行う。普段は前後50:50であるが、どちらかがスリップすると75:25まで変化する。 ■リアデファレンシャルギア 小型軽量なデフを採用。 |
FFレイアウトのアウディは縦置きエンジンのため、フロントのトラクションがかかりやすい。更にエンジンの振動や反力を効果的に押さえることが出来るので、高級なフィーリングが得られる。しかもエンジンとミッションのレイアウトを低重心に出来る。だから乗り味では有利なFRを採用するメルセデスベンツやBMWと互角に渡り合う事が出来る。
quattroシステムは縦置きエンジンのレイアウトにセンターデフとリアデフを追加したシンプルなモノです。エンジンからリアのデフまで一直線にレイアウトされ、しかも左右対称でバランスが良い。逆に考えると、縦置きFFだったからこそquattroが生まれたと言えます。
欠点はフロントが重く重量配分が悪いこと、FFの場合はフロントを重くしてトラクションを稼ぐので問題にはならないでしょう。逆に直進性が良くなるし、衝突時もフロントから当たる傾向にあります。安全性の面から考えても有利になります。
もう一つは、前後方向に室内長が短い傾向にあること。この辺は走りを取るか広い室内を取るかですね。ただしA4の居住性は文句なし。デフやミッションを若干右側にオフセットして運転席の居住性を確保。前モデルまでのペダルレイアウトの違和感が感じられなくなっていますし、屋根が高いので座高が高い鍬兎郎でも広々感じます。大人4人がリラックスして長距離ドライブが出来ると言えるでしょう。
横置きFFベースの4WDとFRベースの4WD
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■横置きエンジン フロントオーバーハングに搭載される。その為短ければ短い程良い。その点横置きエンジンはFF向きといえる。しかし、エンジンの回転に起因する振動や反力を押さえるのが大変。 ■クラッチ、フロントデファレンシャルギア、センターデファレンシャルギア クラッチに入ったパワーはフロントデフを素通りし、ミッションへ。センターデフでトルクを振り分け前後のデフへ。フロントタイヤへのドライブシャフトを同じ長さに出来ないのが辛い。 ■リアデファレンシャルギア |
FR4WD | ![]() |
■縦置きエンジン ■トランスミッション 通常のFRのミッションにトランスファーを追加。変速されたパワーはセンターデフへ ■センターデファレンシャルギア(トランスファー) 通常はビスカスカップリングか多板クラッチを用いてトルクの振り替えを行う。 ■フロントデファレンシャルギア 図を見てもわかるようにエンジン下に来るためレイアウトは非常に苦しい。逆に言うとエンジン搭載位置を下げられないので重心が上がってしまう。これはロードスポーツにとって致命的な欠点となる。 ■リアデファレンシャルギア |
横置きFFベースの4WDはメカニズムをコンパクトにまとめることが出来るが、エンジンの回転に起因する振動や反力を押さえるのが大変です。エンジンマウントを硬くするとアクセルのON/OFFで発生する反力が室内に進入する。柔らかくするとぎくしゃくした動きになり違和感を覚える。
更にフロントのドライブシャフトを同じ長さにするのが難しく、トルクステアが発生してしまう。
FRベースの4WDはレイアウトが複雑になり過ぎます。またエンジン下にセンターデフやドライブシャフトが通るのでエンジン搭載位置を下げられない。
quattroシステムのトルク配分
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50:50 | 75:25 | 25:75 |
通常の前後トルク配分は50:50。高速スタビリティに貢献している。 | リアがスリップするとフロントにトルクが配分される。安定性が増す。 | フロントがスリップするとリアにトルクが配分される。アクセルONではこの状態になるのでドリフトも可能。 |
quattroシステムの良いところはドライバーにも積極的にコントロールできる部分にある。アクセルONでコーナーを回る場合にリアにトルクが配分され、リアをスライド気味に出来る。これで回頭性が増し、素速いコーナーリングが可能となる。しかもフロントが引っ張ってくれるので、FRのようにクルッとスピンすることもない。しかし、舗装道路でquattroをドリフト状態に持ち込むのは至難の技だが、雪道では簡単にテールスライドに持ち込める。
雪道の走りはこちら→鍬兎郎号の冬の走り