ROMチューン

石川エンジニアリングにて撮影

ROMチューンのきっかけ
 さて、チューニングも佳境に入ってきました。最後はやっぱりROMチューンです。何と言っても最近の車はすべてコンピュータの制御で動いています。A4とて例外ではありません。今までエアクリ交換、排気管交換、ターボパイプ&インタークーラー交換など、エンジン関係にも手を入れてきましたが、96Tqの場合はブーストのコントロールをはじめ、燃調などすべてのエンジンマネージメントをCPUが行っているので、補機類を交換しても根本的なパワーアップは望めません
 特にTqのようにターボ車の場合このCPUをいじることにより大幅にパワーアップする可能性を秘めています。しかし、いくらDIY好きの鍬兎郎でも個人でROMを書き換えることは出来ません。そこで業者さんにお願いすることにしました。
 日本でROMチューン出来るのはCOX、石川エンジニアリング(NEUSPEED)、ABT、RUDDEL等が挙げられます。鍬兎郎号の場合K03改K04同等タービンに換装してあるので、現車合わせ=カスタムROMを作ってくれそうな業者を選ばなくてはなりません。そこで色々情報を集めたところ、どうも石川エンジニアリングがやってくれそうな雰囲気なのでダメ元で聞いてみようと思いました。
 
 コンピュータの場所はここね。右はノーマルROM。

 んで、2003年7月にステンレスメッシュブレーキホースが欲しくて、石川エンジニアリングにメールしてみました。そのときはステンレスメッシュブレーキホースは在庫が無くて買えませんでした。メールの中でROMチューンについて尋ねてみました。
 こちらからは鍬兎郎号の改造点と対応して頂けるかどうか、また日数はどのぐらいかかるかメールしました。それに対し石川エンジニアリングの返事は現車合わせなら、つまり車を石川エンジニアリングのある相模原まで持ってくれば対応可能、日数は石川エンジニアリングの休業日と鍬兎郎が工場に行ける日の都合を合わせて8月5日と6日の2日間で何とかやってみましょうとのことでした。

8月4日
 なんとか休みが取れたので、約束の前日4日に車を持っていけることになりました。午前2時に函館からフェリーに乗り、6時に青森に到着。まずは燃費計算のためガソリンを満タンにして、トリップを0にして東北自動車道に入りました。青森県内は若干の雨でしたが、その後はドライ路面で余裕の走り。巡航速度100km/hなどA4にとってはお手の物です。何事もなく東北道を降りて、とりあえずガソリン満タンに。638.3km走って54.0Lの消費。トータル11.82km/Lでした。(全線高速道路、エアコンオフ)
 さて、石川エンジニアリングを目指すのですが、相模原は土地勘がないのでどう行って良いやら困ってました。そこに2月の東京OFFでお友達になったシゲルさんが迎えに来てくださるとのことで、図々しくもお願いしちゃいました。シゲルさんありがとうございます。なぜか相模原警察署で待ち合わせをして、石川エンジニアリングまで案内して頂きました。凄く入り組んだところにあったので、一人で行って、到着できたか疑問です。首都圏ではカーナビは必須ですね〜
 お店を訪ねると、凄くきれいな店構え&工場でした。チリ一つ落ちてません。「ああここがアウディチューンの総本山か〜」と感激する間もなく、石川さんに挨拶をすませ、早速チューンの打ち合わせをしました。こちらからは鍬兎郎号のいじったカ所の説明とどんな風にして欲しいのかを最終的に話しました。石川さんは鍬兎郎の話を黙って聞くとやおらハンディコンピュータを手に鍬兎郎号に向かい、調べ始めました。そしてボンネットを開けエンジンを見て、リフトに上げ排気管を見ました。石川さんの表情は心なしか渋い感じです。緊張する鍬兎郎。どうなるのかな〜やっぱだめかな〜ってドキドキしてました。普段から血圧が高いのですが、この時はたぶん200越えてたと思います。鍬兎郎の心臓にタービン着けたら500psは硬いぞ!なんて冗談も出ませんでした。
 石川さんの渋い表情には訳がありました。

石川さんのお言葉
 96Tqの場合、燃料の制御はすべてエアフロ1本でやっている。(97以降はブースト圧も拾って制御している。)その為、設定以上のボリュームの空気が入ると安全方向に制御(燃料カット)が入る。パワーを出すためには制御が入らないギリギリで加給圧等を設定するしかない。燃料や点火時期、ブースト圧をコンピュータが制御している以上、(喩えて言うなら)コンピュータのご機嫌を伺いながらでないとチューニングは出来ない。鍬兎郎号のようなダイレクトインティークは急激に吸気が増えるため、エアフロの値も急激に上がり、すぐにエラーが出てしまう。純正ボックスを残した方が空気量が徐々に増え、エラーが出にくい。また、排気管もあまり太いとオーバーシュートが出る。経験上純正ボックスで60パイぐらいの排気管を使った時が一番パワーが出た。
 鍬兎郎号の場合は試験用ROMを装着し実験してみないと何とも言えないが、ある程度安全方向に振るしかないだろう。というお話でした。つまり改造の方向は間違ってないけど、96Tqのエンジン制御システムには合ってなかったと言うことです。それでも対応して頂けるとのことなので、嬉しかったです。ただ、ノーマルだったらもっとギリギリを狙えたのか〜と思うと、吸排気の改造を後悔しました。
 ただし、お話の中では純正触媒の位置について、あんなところに置かれたらパワーが出にくいとも言っておられました。んー触媒を今のままでワンオフ60パイの排気管にしたらいいのかな?とも考えています。
 と言うことで、なんとかROMチューンを承諾して頂き、泣きながら帰らなくても良くなりました。めでたしめでたし。
 また、偶然ですが鍬兎郎BBSにカキコしてくださったYUKIさんもいらしてました。カッコイイおニューなA4が羨ましかったです。(泣)

8月6日
 いよいよ鍬兎郎号を引き取りに行く日が来ました。4日の石川さんの話から、あまりパワーは出ないだろうな〜でも、ノーマルよりは速くなるなら、まあいいか〜と期待しないで行きました。この日も小田急線相模大野駅までシゲルさんが迎えに来てくれました。シゲルさんお忙しい中、連日のおつきあいありがとうございます。
 さて、お店に着くと既に鍬兎郎号は仕上がっていました。早速石川さんの運転でテストドライブに行きました。道すがら今回のチューンの内容についてレクチャーを受けました。
 直線に出て一旦停止。前を走る車が見えなくなったところで発進。石川さんがアクセルを踏むとスゴイ加速です!いかにもターボ車で加給入ってるなあって感じの加速です。いやあ一発で気に入りました。石川さんに頼んで良かった〜って思いました。
 さて、石川さんの話を要約すると、エアクリーナーがダイレクトなので、急にガバッとアクセルを開けると途端にエアフロのボリュームが上がり過ぎて、燃料カットが入るとのこと、また、高いギアで加速して行く場合にも同様です。だからアクセルはエンジン回転に合わせてゆっくり踏むこと。そうすれば燃料カットは入らない。ただし、ノーマルボックスに戻せばガバッと踏んでも大丈夫。まあ、エアフロを刺激しないように踏めば充分速いわけですから、帰るまでは我慢します。また排気管も太すぎるので、60パイぐらいのものに換えればもっと低速トルクが出るし、下からスムーズにタービンが回るとのこと。こちらも近々直したいと思います。
 さてチューン内容ですが、嬉しいことに、K03改造タービンを生かすために、ROMのセッティングを安全方向にしては「面白くないだろう」と、エアクリーナーや排気管を改良することを前提に、パワーが出る方向にセッティングしてくれたそうです。また、燃料プレッシャーレギュレターを5barのものに交換。つまりステージ2にかなり近いところまで行ったということですね〜。こりゃスゴイかも〜スゴイ加速の訳も納得ですね〜!
 ただし、今後エアフロにボリュームをつけたりなどの改造は危険なので絶対にやめてくれと言われました。もともとTqはターボ車にしては圧縮比が高めです。これは低速域のトルク向上を狙ったセッティングなんですが、これでエアフロをいじって、燃調が狂ったら(空気量に比して燃料が薄くなる場合)ノッキングを起こしエンジンブローします。気を付けなければなりません。
 
 ROM交換した基板とROM。ソケットが装着されています。いつでも交換OK?

帰り道
 石川さんに支払いを済ませ、お礼を言って帰路につきました。北海道と違って一般道でアクセルを開けることは出来ませんが、実力の一端をかいま見ることが出来ました。ノーマルの時は3000rpmぐらいからパワーが盛り上がりますが、4500rpmぐらいまでしか続きません。それ以上回してもターボというよりNAの「素」の加速でしか感じられません。しかしROM交換後は、いかにもターボらしい回せば回すほど回転の上がりが速くなってゆく感じの吹け上がりです。こりゃスゴイです。これこれコレです!あたしの求めていたものは!
 今回はタービンも交換したばかりだし、ナラシの意味も込めて東北自動車道を淡々と走ってきました。エラーを出すとリセットしなくちゃならないので、あまり踏めなかったし。でも、1回だけ5速で踏んでターボの効きを楽しんでいたらストール。(実は燃料カット)やっちゃいました。負荷の大きい状態(坂道や高いギアでの加速など)ではエアの吸い込みが多いみたいです。気を付けねば。
 東北道を降りて燃費を計算したところ637.5km走り54.41Lの消費。トータル11.72km/L。(全線高速道路、エアコンオフ)ROM交換前とほとんど変わらない状態です。コレにはビックリですね。燃費がいいのにパワーアップしてるなんて凄いですね〜嬉しい誤算です。
 ちなみにROM交換最中の燃費は485kmで49Lの消費。トータル9.9km/L。(一般道、高速道路半々、エアコンオン)あんなに渋滞があって、更に石川さんで全開テスト走行(開発中も)してこの燃費。普段のちょい乗りよりイイくらいでした。

出力は?
 石川さんのお話ではエンジン軸出力で190psぐらい出ているそうです。シャシダイに載せた場合は140ps(ステージ2で160ps前後)の測定値になるのでは?とのことでした。これはシャシダイに載せた場合、ミッションから後ろの駆動部分のロスが出るためなのだそうです。またエアクリ、マフラーをエンジンに合わせればこのままでもう少しパワーアップするそうです。これからは正にチューニング(調律)になるんですね。もう少し頑張ります。って事はやっぱステージ2相当のROMなのかな?

乗ってみて
 家に帰ってきてエアクリーナーボックスを戻し、K&Nフィルターを装着し、全開テストに行きました。0発進では3000rpmからのパワーが凄いです。回転が上昇するにつれ、加速が鋭くなるターボ特有のワープ感が得られます。こいつは凄い!って、これがホントのターボの加速だよね〜1速・2速は一瞬で吹けきり、3速はもちろん4速でも鋭い加速が得られ、タコメータは狂ったように上昇します。(オーバー?)ノーマルとの差は歴然です。シフトアップしたときのギアのつながり(つまり、レッドまで引っ張り、シフトアップしてもパワーバンドに乗ってます)もバッチリで、サーキットでも大きな武器になりそうです。
 2000rpmぐらいで走っている分にはノーマルとあまり変わりません。この点も燃費を考えるとイイですね。常に急激に加速されたら乗っていて安心出来ないし疲れます。普段は従順な羊だが、ひとたびアクセルを踏み込み3000を越えるとエンジン自身が回りたがっている感じ・・・まるでどう猛な野獣に変わる二面性を持っています。高回転域は6500rpmまで気持ち良く吹けるようになりました。7000rpmでもリミッターに当たりませんが、6500rpm越えると急激にパワーダウンする感じです。6000rpm+でシフトアップした方が速いと思います。でも、サーキットではこの一伸びが効くんですよ。ギアの選択で迷ったときに低いギアを使えるからなんです。
 ただし、総合的に見てマフラーが太すぎるため、低速トルクが細いです。ある意味ドッカンターボっぽくなっちゃいました(泣)。この部分を何とかしなければ・・・。また、凄く速くなったのでブレーキがきつくなりました・・・。コレが螺旋っていうやつ?完全にはまってまんがな・・・。

 チューニングを決心してから、ここまで長い道のりでしたが、やっと満足するところまで来ました。たくさんのみなさんの応援&アドバイスにより、何とか満足するところまでこれました。ありがとうございました!今後は車を壊さないようにいじっていきたいと思います。引き続きご指導ご鞭撻をよろしくお願いします。

サーキットでは
 走り出して感じたのは、まず加速がよいこと。めっちゃいいかんじです。特に2ndの加速が素晴らしいです。国産ターボ軍団にはかないませんが、NA車にはアドバンテージがあります。コレは純正から考えると信じられませんね〜バリバリのロードスターも抜いちゃいましたよ〜耐久性も申し分なく、長時間走ってもタービンやエンジン本体には何のトラブルもありません。実用的なROMチューンだと言えるでしょう。タイムはROM交換前から1秒しか縮みませんでしたが、もう少し走り込めばタイムアップすると思います。

反省点
 今回A4のチューンをしてみて思ったことは、A4Tq(96)の場合特殊なので、通常の考えは通用しないと言うことです。普通毒キノコや排気管を装着したら速くなりますよね?ところが実際はそうではなかった。やはり素人考えで補機類をいじるよりキチンと専門店に相談して、ROM交換を筆頭に総合的に進めた方がいいと思います。

排気管の交換後
 色々考えたのですが、石川さんのお店で見たNEUSPEEDの排気管を装着することにしました。理由としてはオールステンレス製でダウンパイプも同梱されお得である。適度な太さで、このエンジンにマッチしている。といちさん愛用!ということです。
 一般道のテストでは、低速からトルクが出ています。ほぼ純正と変わらない感じで非常に運転しやすくなりました。そして高回転では若干回転上昇が鈍くなってますが、気持ち良く吹けていきます。この排気管は音量は控え目だが、低音のイイ感じの音がします。かといって近所迷惑にはならない感じです。これだけでも交換して良かったと思いました。ただし、5000rpmを過ぎると「シュゴー」とまるでジェット機みたいなタービンの排気抜きの音がします。一般道では使わない回転域なので安心ですが、注意が必要ですね。
 サーキットでも中低速が改善された分だけ乗りやすく、オーバーシュートも出にくくなったので、積極的にアクセルを踏めるようになりました。ROM交換前のベストタイムが1'19"76でROMと排気管交換後は1'17"72と2秒以上速くなりました。また、前の排気管の時よりも1秒速くなったし、かなりイイ感じです。

まとめ
 ROM交換して一番気に入っているのが吹き上がりの気持ちよさです。実際は200PSも出てないエンジンですが、ノーマルROMのターボらしくない吹き上がりに較べれば3000rpmを越えた当たりからのカキーンって吹き上がりが乗っていて楽しいです。金額を考えると、誰にでもお勧めは出来ませんが、お金をかけた価値はあったと思います。公道では怖くて全開に出来ないぐらいに速くなったので自分としては満足です。

御礼
 今回のエンジンチューンにおいて沢山の方々にお世話になりました。ここで御礼をいたします。
K03改タービン&IC&ターボパイプ(破格値)チューン相談 帝王さん
純正触媒(破格値) ミヒャエル(アイルトン)松さん
ROMチューン 石川さん
排気管取り付け(格安) アウディ函館
プラグ情報 inazumaさん
格安フェリーの手配 碁流祐さん
現地でのご案内 シゲルさん
現地でのお見舞い トトロさん
その他応援してくれたすべての皆さん!ありがとうございます。

項目 金額 備考
ROMセッティング 100000 AEB557 NEUSPEED
ソケット加工 15000
5barフュエールプレッシャーレギュレター 18400 NEUSPEED製
FPR交換工賃 2400
バキュームホース 300
小計 136100
6805
合計 142905
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